日本の宗派について

名称 開祖 本尊仏 経典 中心寺院 寺院概数
日蓮宗
日蓮 1222-1282
          
久遠実成釈迦牟尼仏 法華経 身延 久遠寺
池上 本門寺
5.230
曹洞宗 道元  1200-1253 釈迦牟尼仏 他 法華経 般若心経 涅槃経 他 能登 永平寺
鶴見 総持寺
14.690
臨済宗 栄西  1141-1215 釈迦牟尼仏 他 金剛頂経 観音経 般若心経 他 京都 妙心寺
鎌倉 建長寺
5.730
黄檗宗 隠元  1592-1673 釈迦牟尼仏 他 阿弥陀経 般若心経 他 京都 萬福寺 460
真言宗 空海  774-835 大日如来 他 大日経 金剛頂経 般若心経 他 京都 東寺
紀伊 金剛峰寺
12.310
浄土宗 法然  1133-1212 阿弥陀仏 観音菩薩
勢至菩薩
無量寿経 観無量寿経 阿弥陀経
般若心経
京都 知恩院
東京 増上寺
7.080
浄土真宗 親鸞  1173-1262 阿弥陀仏 無量寿経 観無量寿経 阿弥陀経 京都 西本願寺
京都 東本願寺
19.360
融通念仏宗 良忍  1072-1132 十一尊天得如来 法華経 華厳経 阿弥陀経
観無量寿経 梵網経
大阪 大念仏寺 350
時宗 一遍  1239-1289
          
阿弥陀仏 無量寿経 観無量寿経 阿弥陀経 藤沢 遊行寺 410
天台宗 最澄  767-822 釈迦牟尼仏 薬師如来 他 法華経 大日経 阿弥陀経 
般若心経 他
比叡山 延暦寺
日光 輪王寺
上野 寛永寺
3.340
華厳宗 良弁  689-773 毘盧舎那仏 華厳経 奈良 東大寺
京都 高山寺
130
法相宗 道昭 弥勒菩薩 薬師如来 
成唯識論 他 奈良 薬師寺
奈良 興福寺
37
律宗 鑑真  688-763 盧舎那仏 梵網経 法華経 四分律 奈良 唐招提寺 39

日本において宗教法人の認証は、宗教法人法に基づいており、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事が認証
を行う。但し、他の都道府県内に境内建物を備える場合や、他の都道府県内にある宗教法人を包括する宗教法人の場合など
は文部科学大臣が認証を行う。通常、下記の様な一般的宗教団体(宗派)は包括法人格を有し、その傘下の各寺は都道府県
の認証による単独の法人格を有している。しかし、新宗教等などの宗教団体の中には法人格を得ていない場合も多い。

2002年の時点で、日本には、神道系85,212団体、仏教系77,640団体、キリスト教系4,445団体、諸教15,337団体が存在する。

688------763 鑑真 49歳
 689-------773 良弁 
85歳
       767--------822 最澄 
56歳
         774--------835 空海 62歳
                       1072-------1132 良忍 
61歳
                              1133---------1212 法然 
80歳 
                               1141---------- 1215 栄西 
75歳
                                 1173-----------1262 親鸞 
90歳
                                  1200--------1253 道元 
54歳
                                       1222---------1282 日蓮 
61歳
                                        1239---------1289 一遍  
51歳
                                                        1592-------1673 隠元 
82歳                                   

日蓮宗 関係大学  立正大学・身延山大学  日蓮宗についての詳細は日蓮聖人関連コーナー

日蓮系のものとしては、外に顕本法華宗、法華宗本門派・陣門派・真門派、本門法華宗、日蓮宗不受不施派、日蓮本宗、本門仏立宗があり、他に新興宗教としての創価学会、霊友会、立正佼正会等がある



曹洞宗  関係大学   駒沢大学・愛知学園大学 他        曹洞宗の公式ホームページ

禅は中国の菩提達磨(?〜530 少林寺の面壁9年は有名)を初祖とし、種々な分派を産んだ(五家七宗)。その中で洞山良价、雲居道場、曹山本寂の系統を曹洞宗と云う。即ち洞山の洞と曹山の曹を宗派名に冠したのである。この派の教えを入唐し日本に伝えたのが道元である。

一般的に宗祖たる人物は1名であるが、曹洞宗では両祖と云い2人の宗祖を仰いでいる。即ち、道元(永平寺開山)を教義の祖として「高祖」とし、瑩山ケイザン(1266-1325 総持寺開山)を教団の祖として「太祖」と称している。また永平寺と総持寺を両山と呼ぶ(総持寺は元は能登にあったが明治31年大火にあって現在の鶴見に移転)。

宗義の特徴は只ひたすらに座禅をする只管打坐シカンタザ(黙照禅)と、この座禅を修する事に於いて悟りを目的とせず、自己の修行が即、仏の行(本証妙修ホンショウミョウシュウ)で、行儀作法が厳密・綿密である事にある。

悟りを目的としない、悟りを求めず、とは仏教としては奇異であるが、悟りを否定しているのではなく、悟りを求める意志を持つことは、求めるという打算・執着となり、打算から得た悟りは打算に過ぎない。真の悟りとは、悟りを求めず(如何なる意志も目的も持たず)只管打坐にこそある(無所得・無所求・無所悟)とする。

従って、不立文字・教外別伝(文字や知識は修行の妨げになるので、文字や言葉によらない)の立場から、特定の経典を依拠とする事はない。本尊仏は基本的に歴史上の釈迦牟尼仏。

祖書  『正法眼蔵』『修証義』『普勧座禅儀』『学道用心集』 他



臨済宗  関係大学   花園大学・岐阜正眼短大        臨済宗の公式ホームページ

妙心寺派、建長寺派、円覚寺派等14派がある。

中国禅五家七宗の一つで、臨済義玄(?-869)を開祖とする流れ。これを日本に伝えたのが栄西。栄西は中国よりお茶を日本に伝えた事でも有名。

曹洞禅と同じく釈尊を大恩教主と仰ぎ、特定の本尊仏や特定の経典に依拠しない。本尊は釈迦如来、薬師如来、大日如来、観音菩薩等々である事もある。

曹洞禅が只管打坐の黙照禅とするのに対し臨済宗の禅は、問答を通して無を体得する公案禅(看話禅カンナゼン)と云い、これを検証する事が座禅であるとする。人は本来的に仏であるので、座禅によって仏性を見いだすとする(見性成仏)。

栄西の後、夢窓疎石・一休宗純・沢庵宗膨など歴史上有名な傑僧が多く、宗風を継承したが、白隠1685-1768)に至って公案禅が大成された。

読経は棒読み(迅誦)で、経文の意味を探るものではなく、行として、呪文として用いる。

祖書  『碧巌録』『無門関』『臨済録』



黄檗宗オウバクシュウ                             黄檗宗の公式ホームページ

隠元は明の人で黄檗山で出家し臨済禅を学び、1654年(承応元年)来朝。臨済宗の一派として活動したが、他の禅宗2派と宗風がかなり異なり、明治9年に黄檗宗として独立した。

教義の特徴として、同じ禅家の曹洞宗と臨済宗と大きく異なる点は、往生浄土や念仏を説く、念禅一致の立場に立つ事である。これは、対機説法の方便として念仏を認める(但し、阿弥陀如来を礼拝の対象とはしない)という事である。所依の経典を立てない事は曹洞宗、臨済宗と同じである。

曹洞宗と臨済宗が宗代中国禅から、かなり日本的変化を遂げたのに対し、黄檗禅は元来の中国禅文化を強く反映している。例えば声明、鳴り物の法具、読経の旋律、読経の発音等である。

仏教一般は経典を漢音(漢時代の発音)で読むが、黄檗宗の読経発音は唐時代の発音である唐音で読む。即ち、「南無阿弥陀仏」を「ナムオミトフ」と発音し、「般若波羅密多心経 観自在菩薩」を「ポゼポロミトシンキン  カンツサイプサ」と発音するのである。尤も最近は漢音の読法も併用されているようである。

祖書 『普照国師広録』



真言宗    関係大学   高野山大学・種智院大学・宝仙学園大学  真言宗の公式ホームページ

高野山真言宗、新義真言宗、信貴山真言宗が独立して在り、真言宗醍醐派・智山派・豊山派等の10派がある。

真言とはmantraマントラの訳。神呪、密言の意味で真言宗は密教の教え。密教とは顕教に対する言葉で、顕教が理論的・順序立てた教説であるのに対し、密教はストレートな直感を大切にする立場。換言すれば左脳的仏教が顕教で右脳的仏教が密教と云うこともできる。

真言宗は密教である大日経・大日如来を中心とするので、顕教であるこれ以外の教説や経典は歴史上の釈迦によって説かれたものであるが、真実の教えは大日如来(vairocanaで毘盧舎那仏と音写される。華厳宗や律宗の本尊仏と同じ)であり、顕教は大日如来出現までの仮の教えであると説く。即ち、一切の諸仏は結果的に大日如来に帰するとする立場。


この思想の仏身観が真言の曼荼羅で、大日如来を中心にした彩色の美しい物が多い。大日経による胎蔵界曼荼羅と金剛頂経による金剛界曼荼羅があり、これを両界曼荼羅と云う。

胎蔵界曼荼羅
悟りの本質を示す面を表現。大日如来を中心にして12のブロックから構成され、大日如来は法界定印を結んでいる。全てのものに内在する理性が大悲により守り育てられていることを示している。真言は「アビラ ウンケン」

金剛界曼荼羅
大日如来の智徳を示す面を表現。大日如来を中心に6のブロックから成り、大日如来は智拳印を結んでいる。智慧が全ての煩悩をうち砕く事を表見する。真言は「オン バザラダト バン」


大日経は中期大乗仏教に属するもので、仏教の呪法・呪法が断片的なシャーマニズムであったものを、教理的・実践的面でも成仏を目的としたものとして構成したものである。この教主である大日如来は、元来は華厳経の教主として存在したが、大日経の成立によって真言密教の教主としての位置を確立した。

信仰の特徴としては三密がある。即ち、身密(手に印相を結ぶ)、口密(口に真言を唱える)、心密(心に曼荼羅を観想する)。また、特徴的法儀に護摩homaゴマ供養がある。これはインドのバラモン教を源とする法儀で、段木と呼ばれる木片(護摩木)を燃やし、火中に香油を注いで祈願をするもの。

祖書 『十住心論』『即身成仏義』『弁顕密二教論』『般若心経秘鍵』 他



浄土宗   関係大学  仏教大学・京都文教大学・東海学園大学 他   浄土宗の公式ホームページ

浄土系のものとして他に、浄土宗西山深草派、浄土宗西山禅林寺派、西山浄土宗がある。

中国浄土教の大成者である善導(613-681)は阿弥陀仏の48願中の第18願を阿弥陀仏の本願であるとし、この救済の形を称名念仏(南無阿弥陀仏と称える事)即ち「本願念仏」を説いた。この影響を受けた法然(源空)は、この論を更に高めて、称名念仏は阿弥陀仏が48願より特に選んだものとする「選択本願センチャクホンガンネンブツ」を説いた。

法然は仏の教えを聖道門(修行の結果として仏になる・自力的・難行道)と浄土門(凡夫は仏になるのは不可能、阿弥陀仏の本願である念仏によって極楽浄土に往生する・他力的・易行道)に分け、浄土門以外の教えを難行道として全て助業、雑業として否定した。末法の衆生は聖道門の教えでは救済されず、易行道の浄土門が救済できるとする。

念仏の隆盛と共に他宗及び朝廷から弾圧を受け、法然は1207年土佐へ流罪、親鸞は越後へ流罪となった。

日蓮はこの立場を「立正安国論」中に「法然は法華経等の釈尊の教えを全て、捨てよ・閉じよ・閣サシオケよ・抛ナゲウテよとして民を惑わした」と批判した。

多くの宗派は成仏を目的とするのに対し、この宗派の目的は一に「往生」にある。往生とは元来、他の世界に生まれ変わる事を意味し、種々な世界への往生観があったが、浄土教の隆盛によって専ら弥陀の救済を信じ、(他力本願)念仏を称える(専修念仏)により、この現実世界(穢土)を離れ、阿弥陀仏の西方極楽浄土への往生を意味するようになった。徳川家康の旗の「遠離穢土 欣求浄土オンリエド ゴングジョウド」はこれを表している。

成仏とは修行の結果として仏になる事で、凡夫には難行難解としてこれを退け、易行の称名念仏により、煩悩を持つ凡夫がそのままの姿で極楽浄土へ往生することが最大の結果・目的であると説く。即ち、成仏と往生は厳格に区別されている。この立場の成仏とは往生の後で、聖道門の修行に励み仏をめざした結果であることになる。

本尊は阿弥陀仏であるが、脇仏に観音菩薩(阿弥陀仏の慈悲を表す)と勢至菩薩(阿弥陀仏の智慧をあらわす)を配し、この3仏を「弥陀三尊」と云う。

祖書  『選択本願念仏集』選択集と略称される 『一枚起請文』 等



浄土真宗   関係大学   龍谷大学・大谷大学 他       

浄土真宗東西の本願寺派が最大、他に真宗大谷派・高田派・興山派・仏光寺派等9派がある。

法然の弟子「親鸞」を宗祖とする浄土系の宗派で既成教団の中で最大(一般に門徒宗とも云う)。親鸞没後、8代目の蓮如によって全国に広まった。浄土宗と共に念仏を称える浄土門であるが以下の相違がある。

本尊・浄土宗が阿弥陀三尊であるのに対し、阿弥陀仏一仏。
経典・浄土宗が浄土三部経に差異を認めていないのに対し、浄土三部経に表裏(勝劣)を見て、無量寿経を中心とする。他の2経は方便としてこれを助けるものとする。
教理・浄土宗が専ら極楽往生を説き、成仏は往生の後の修行によるとするのに対し、この世で念仏の信心を持つ時には、煩悩を持った人間そのままの姿で往生し、また同時に仏になる(成仏)ことができる(往生即成仏)とする。

人が救いを求めずとも念仏により、必ず仏(阿弥陀仏)が救って下さるという絶対他力。この現世での往生成仏は叶わないが、命終の時がその時である。

教義の特徴として有名な「悪人正機説」がある。この思想は一般的な悪人も成仏できるとする悪人成仏論とは異なり、悪人こそが濁世に於いては救いの目的・対象である事を意味する。この考えは法然から親鸞に伝わり「歎異抄」の「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」の言葉で知られる。然し、真宗高田派はこれを認めていない。

祖書『教行信証』『愚禿鈔』『入出二門偈』『一念多念仏意』 他。



融通念仏宗                           

一人の念仏と多人数の念仏が融通(自他の念仏が互いに力を及ぼし合う)して往生の機縁となる。一人の念仏称名の功徳に、全ての人々の念仏功徳が収まっている(一即一切・一切即一)の考え(億百万遍功徳円満)で、浄土宗が阿陀の極楽での往生、浄土真宗の極楽での往生即成仏に対して、娑婆即浄土の考えのもとに、この世での往生を目指す。

教理的には、天台の「一念三千・十界互具」と華厳の「重々無尽」と念仏思想の融合と見ることができる。従って、念仏宗の名前を持つが、主要経典は法華経と華厳経になり、阿弥陀経等の浄土関係経典は二次的な存在となっている。

本尊の「十一尊天得如来」とは、中央に阿弥陀仏、その周囲を十体の菩薩(十界)が取り囲んでいるもの。これも一念三千・十界互具の思想を表現しているもの。




時宗

時宗とは臨命臨時宗の意味で、日常の瞬間を常に命終と会得し、念仏を称えることを宗是とする名号至上主義。
今、称えた念仏が臨終の念仏と考える(一瞬一瞬が臨終で往生)で、平常と臨終の区別はしない。
即ち、阿弥陀仏の名号自身に往生の功徳が具備されているので、弥陀を信じようが、信じまいが関係なく(一切を忘れ・何も期待せず・価値判断の必要なく)とにかく、一心不乱に名号を称えるば往生できるとする。踊り念仏とも異称される時宗念仏も、この姿からの言葉と解される(盆踊りの起源ともされている)。

阿弥陀仏の覚り(法)と衆生(機)の往生は一体不二で、衆生は本来既に往生することが決定している。念仏を称えて往生するのではなく、念仏即ち往生である。

本尊は阿弥陀仏であるが「南無阿弥陀仏」の名号も本尊であるとする。
浄土三部経に得拠するが、阿弥陀経を中心とする(浄土真宗は無量寿経が中心)。

一遍は命終の時、所持する一切の書物等を焼却してしまったので著書は残っていない。



天台宗  関係大学 大正大学・叡山学園 他          天台宗の公式ホームページ

天台系のものとして、他に天台寺門派、天台真盛宗、本山修験宗、金峰山修験本宗等の9宗派がある。

日本天台の祖は天台大師最澄であるが、その源は中国の天台智者大師 智チギ(538-597)にさかのぼり、最澄が延暦23年(804年)入唐し天台学を得て帰朝、天台法華宗と立宗したことより始まる。

最澄が持ち帰った厖大な経典等は延暦寺に集積され、多くの学問僧の研究研鑽の場となり、総合仏教大学の様相を呈した。後に各宗の祖となる、法然、親鸞、道元、日蓮、空也、良忍、栄西などもこの比叡山に学び鎌倉新仏教の母胎となった。

法華経一乗思想が宗義の根本であるが、徐々に密教や念仏、禅、修験道等の教義も取り入れ、法華思想を以てそれらを融合するとする統合主義的教義(真言密教を東密トウミツとするのに対し、天台密教は台密タイミツと云う)。従って本尊も「久遠実成の本仏(釈尊)を本体とするが、他の諸仏も、「この本仏と一体不二であり等しく尊信する」とあるように特定の本尊を立てない。故に各寺院の本尊は阿弥陀仏、薬師如来、観音菩薩、不動明王、釈迦牟尼仏 等々となっている。

天台の特徴的表現に「朝題目の夕念仏」がある。これは文字通り、朝には法華経を読み、夕方には念仏を行う事で、相反する思想の混合で違和感をもつが、念仏や密教をも取り入れている非選択的・融合的な天台学では自然・当然な事でもある。

元亀2年(1571)織田信長によって比叡山が焼き討ちされ、全山焼土と化した悲劇は有名である。

天台の修行の一つとして有名なものに「千日回峰行」がある。これは比叡山一帯の山々を曼荼羅にと見なし、7年間に1000日の回峰を行う荒行の事である。



華厳宗 

538年日本公伝した仏教の宗派は厳密には学問の学派を意味し、華厳・法相・律・三論・倶舎・成実の6派であり、南都六宗と称された。当時の仏教は専ら学問のための仏教であり、宗教的には国家・皇室の泰平、五穀豊穣、仏法興隆を祈る、一部貴族エリート階級のための宗教であった。仏教が真に一般庶民のための宗教になったのは鎌倉時代に至り、法然・親鸞・道元・日蓮等を待つことになる。

本尊の毘盧舎那仏Vairocanaは(大日如来)東大寺の大仏としてよく知られ、十方に光明を放つ太陽を表し、その光明によって迷う人々を救う仏とされている。

宇宙の中の全ては互いに交わり合いながら流転し、一つの中に一切を含み、一切の中に一つが満ちている「一即一切 一切即一」の教理によって、仏と衆生は一体であることを説く。

鎌倉時代、高山寺・明恵上人 高弁(1173-1232)は華厳教学と密教の融和を唱え、より実践的な華厳教学を樹立した。



法相宗

全ての存在は眼・耳・鼻・舌・身・意(思考)の6識とその奥の第7識・末那識マナシキ(自我意識)、更に第8識である阿頼耶識アラヤシキ(根本識・一切の得拠)によって認識される。一切の万法は心より生じ、万法が即 自己の心そのものであるとする教え。即ち、五感等を通して認識する対象物は、我々の心の外に在るのではなく、心の中に在ると考えるのである。

教義の内容から唯識宗とも中道宗とも称される。法隆寺も清水寺も法相宗の寺であったが、現在はそれぞれ聖
徳宗、北法相宗と称している。

多くの宗派が即身成仏ソンシンジョウブツを説くのに対して、成仏には多くの修行と時間が必要であるとする歴劫成仏
リャッコウジョウブツを主張し、特異な教義に五姓格別ゴショウカクベツ論がある。これは三乗方便一乗真実論に対して、三乗真実一乗方便論の具体論でもある。

1.声聞種姓−声聞となる事が定まっている者
2.縁覚種姓−縁覚となる事が定まっている者
3.菩薩種姓−仏になる事が定まっている者
4.不定種姓−声聞・縁覚・菩薩のどれになるか定まっていない者
5.無種姓−−仏になる因(種)が最初からない者−無仏性の一闡提イッセンダイの事
仏となる事ができるのは、上記の3と4の中の菩薩不定の者のみとする。



律宗




参考文献

『日本仏教十三宗 ここが違う』 大法輪閣 平成19年
『仏教宗派辞典』 東京堂出版 昭和49年
雑誌 「大法輪」 昭和50年 11月号 大法輪閣

他 各種の仏教辞典

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