MATさんの「世界選手権潜入記録 5」


注意: このページは読む人のことを全く考えて書いていません。いつもに増してしゃれにならない長さで、おまけに暗くて重い、「結構危ないファンの書きすぎるページ」です(んじゃ改善しろよ)。それでも読むという根性のある方は、電話代の節約のためダウンロード後すぐに接続を切ることをお勧めします。

また会社でネットされている方は上司に怪しまれない時間で流し読みすることは不可能と思われますので、
1.ファイルに保存する 2.プリントアウトする(余計に時間かかるか) 3.あきらめるのいずれかをお勧めします。
なお会社でトラブルが起こっても当方は責任を負いかねます。



3月25日(木) Part2 男子フリー

男子フリーを書く前に花束がらみの戯れ言を。

実は私、花束フェチ。花束を作る時には「○○さんにあげるんだから、この花を基本にして、この花を合わせて…」と花の前で黙って考え込み、セオリーを無視した配色で店員をこき使う、かなりの花屋さん泣かせ。
相手がスケーターの場合、「衣装にも合わせて本人が手に持ってしっくりくる花束を」とモチーフにする。試合前の花束の買い物は絶好のテンションのウォームアップになっていた。

しかし今回は買ったあとにテンションが下がった。花を選ぶのに時間を取りすぎて、公開練習を見るグループが減ったという本末転倒ぶりが全ての引き金。
加えてメッセージを書くのが間に合わず、花屋さんでメッセージを一緒にまとめて花束に組んでもらうことができなかった。仕方がないので花とラッピングの材料を別々に買い、オリジナルダンスの合間にメッセージを書き上げる。
そして適当な場所を占領して作業をしているのだが、この作業がテンションの低下に輪をかけた。花屋さんで茎を切らずにそのままの花を渡されたので、ラッピングペーパーで包もうとしても茎が長すぎて包めない。花の茎を切る。ペーパーで包む。花びらが散らないように花束全体をセロハンで覆う。どんどん出てくるゴミ。花束を作るということは、これだけゴミが出る作業なのか。
この作業、会場の中の通路でやっているから嫌でも人目を引く。どういう風に映っているのだろう。

こんな風にして海外の日本人の評判が落ちていくのかもしれない。

その他いろいろ考えたのだが、しつこくなるからこれ以上は書かない。今さら引き返せないのだから。
まあこんな心理状態で花のラッピングをしていたのだ。通路を通る人からは私の顔は見えないものの、背後に殺気かはたまた幽霊が飛ばす人魂か、絶対何かが漂っていたに違いない。そんな状態の私に話しかけてしまったリアシェンコファンの方。本当に失礼しました。タイミングが悪かったとあきらめてください(苦笑)。

エルビスには過去2回赤いバラの花束をリンクに投げている。
四大陸選手権の衣装をチェックして今回もそうするつもりだったが、予選を見て気が変わった。今年は何か違う。
問答無用の勢いとパワーに合わせた今までのダークレッドより、もっとやわらかな色がいい。

いはいっても、なじみの花を使わないことにかなり戸惑いもする。あの服なんだからいつもの赤いバラでも合うだろうが、そんな色の花を思いつくあたり心弱りが出ているんとちゃうか、ファンが弱ってどうする、しっかりしろとツッコミを入れたり、直感でそう思ったのだから仕方ない、自分の目を信じろと言い聞かせたりでバラの色をどうするかさんざん迷った。
花の買い物に時間を取りすぎた理由の70%は花の選択。しょーもないことで時間を取ってどうすると思われるのだろうが、(私だってどれだけ自分にツッコミ入れたか)しょーもないことにこだわるのがフェチなのだ。

まあ迷った時は第1印象に従うのが得策だろう。
いつの間にかやわらかいクリーム色が似合う「円熟」という言葉を身につけていたのか。
ケガをしたことで今まで見えなかったものが見えることもあるらしい。

でき上がった花束を見てテンションが少し回復する。

袖の色に近いクリーム色のバラが欲しかったけど、さすがにそれは無理だった(笑)。白いバラにダークレッドのカーネーションを合わせ、ラッピングにはゴールドのペーパー。元気がなかろうが勝負以前の状態だろうが、やはりこの男にこの色は欠かせない。

ふっ。完璧☆(何が)


今まで郭君には黄色のカーネーションを使っていた。しかし今年で20才(!)になるし、ショートでクワドをきめたのだ。気合いを入れて格上げして、もうちょっと豪華な花束にしよう。

しかしエルビスの分で考えすぎて、もう郭君の花を考える時間がない。ああどうしよう。(オリンピックでもそうだった…ごめん)
幸い花屋さんで色々花束を作っていて、その中で黄色が基調の綺麗な花束があったので即これを買うことにした。
プロが作ったのだから私が考えていたのより豪華だし、体積はこっちの方が大きいし、今回初めてメッセージもつけたんだから、許してくれ(苦笑)。

私の花束を見て声をかけてきた地元のおばちゃん。
「どうして自分の国のスケーターじゃないの?知りすぎてるから?」
覚悟はしていたが痛い質問。でもそれとこれとは。


第1グループ、会場全体の雰囲気はまだ淡々としていたような気がする。サンドゥ君の時はカナダ応援団が盛り上がったが。
第2グループのアンソニー・リウの演技で会場全体の雰囲気がにわかに盛り上がる。確かに演技はよかったけど、メジャーでないはずのオーストラリアの選手でこの会場全体の盛り上がりは何?第1グループの直後だけに、勢いがあるのが際立ったから?と思っていた私は、この盛り上がりの真の理由を理解していなかった。

表彰台のメンバーと郭君しか目に入ってなかった四大陸選手権。おかげでしっかり5位に入っていたこの人から予想される成績と調子に関しては完璧にノーマーク。予選では飛んでいたんだろうか?
TV放送なら一番見やすい角度でジャンプを見ることができるし、4回転を跳べる選手ならあらかじめ紹介してくれる。番組によっては「始まってから1分ほどで4回転が入ります」と具体的な説明がある。しかし試合会場では常に自分から見えやすい所でジャンプをするとは限らない。当然解説もない。
ジャンプの見分けは生で見る方が絶対難しいと思う!

言い訳がましくだらだら書いたが、とどのつまり私はアンソニー・リウが4回転のコンビネーションをやったのに気づいていなかったのだ。後ろに座っていた方の言葉で真相を知った次第。
アンソニー・リウが4回転ジャンプを持っていることをチェックしていたのか、それともそんな予備知識がなくても初見で4回転ジャンプの識別ができるのか。どっちにしても世界選手権を見に来る観客はレベルが高い。今さらながらすごい所に来てしまった。さしずめ私は大学生の講義に入り込んでしまった中学生か。

さすがに次のティモシー・ゴーベルのクワドサルコー+トリプルトゥループのコンビネーションはわかった。お約束だがアメリカ人応援団の盛り上がりがすごい。本人もパニックになりそうなほどの喜びよう。会場の熱気が一気に上がり、見ている私もやっとエンジンがかかった。

順位の行方に緊張しなくてすむ分、観戦を一番純粋に楽しめたのは第3グループだったかもしれない。

大阪Ex.でも感じたのだが、このシーズンのトベルは何かうまくなったと思う。どこがと言われると説明に困るが、4回転を飛ばないながらも去年からあれだけ順位が上がった(16位→8位)のは、ジャンプを転ばなくなっただけではないと思うのだが、どうだろうか。(単に去年の世界選手権は大崩れしただけとか?)三枚目キャラと思って油断していると、次のシーズンにはちゃっかりダークホースになっていたりして。
会心の演技が終わった後、観客の拍手をあおって弾ける弾ける。ジャッジに礼をするのを忘れちゃだめだよ(笑)。今度は色モノではなく、真っ向から勝負したプログラムが見たい。結構はまると思うが?でもスタイルを変えないことでは一枚上手のストイコのファンに言われたくないか?(笑)

郭君のこと。
中国男子2枠取れた――!!(泣)

世界選手権ではノーミスでも芸術点で思いきりマイナスされ続けて(仕方ないけど)二桁順位、今シーズンはジュニアの試合に回されるわ(根に持ってるなあ(笑))、四大陸選手権では今一つの成績。李君ならともかく、伸び悩んでいると思い込んでいた郭君が10位以内に入るとは正直言って思わなかった。オリンピックといい、なんて大舞台で強い子なの!
しかもフリーでは芸術点が技術点から0.1しか引かれていないジャッジがある。快挙だ!(しかしひどい応援人だなあ(笑))
演技が終わった後、花束をあげるこっちは余裕しゃくしゃく。ゆっくり階段を降りて、花束を投げる。結構大きいのに今までにないほどよく飛んだ。どれだけ気分がよかったか。

余裕があるはずだ。
他の誰も花やプレゼントを投げなかったんだから。

いつもだったら走って階段を降りて一番前まで行って、後ろで待っている人のためにも早く投げてしまおうと焦って、充分に腕が振れないからぎりぎりリンクに届く程度にしか飛ばないのに。ショートでクワドを決めたから、誰かは注目して投げ物が増えるかと思っていたのに!(怒)
世界選手権一桁の順位の選手に投げ物が一つだけなんて…花束格上げしておいてあげてよかった…(泣)
そしてやっとKiss&Cryで笑ったのだ。この子。

笑ったといえばもう一人。「笑え!武史!」がやっと笑った!
演技中、そして演技の後も。95年のNHK杯でお茶の間に名前が知られたものの(私はこの時知りました)、それからはTV放送で映るリンクの上にいる時の顔が何か不安そうで、笑っていてもどこか泣きが入っているような痛々しい印象がすっかり焼きついてしまっていた。
笑ってるよ〜笑ってるよ〜泣き顔じゃないよ〜〜(泣)!
しかしこの後すぐ最終グループ。あまり長く感動の余韻に浸る余裕はなかったのも事実。ごめんね。


ローザンヌから2年。
かつて世界タイトルを獲る切り札だった4回転のコンビネーションを、今は第2グループの選手がきめている。ソロジャンプにいたっては既に展覧会と化している。次々に喜びを爆発させた若武者達。オリンピックを挟んだこの時間は短いようで長い。
それを一番頻繁に、当たり前のようにきめてきた選手は?

ウォームアップ中、エルビスがジャンプをミスして転んだ。ウォームアップ中にジャンプで転ぶといって思い出すのはオリンピック。まさか。
大丈夫。しばらく立ち上がれなかったオリンピックの時とは違う。すぐ立ち上がって滑っている。

最初のクワドのミスと途中のトリプルのミスは、明らかに観客の反応が違っていた。途中のトリプルは飛んだ瞬間ダブルとわかる。音楽的にも一番単調な所、一気に会場のテンションが下がっていく。

将来を有望されながら、また頂点を極めた矢先に選手生命を左右する大ケガをし、そのために十分な状態に仕上げる事ができず、かつてとはかけ離れたボロボロの状態でプレーをするスポーツ選手の姿を何人見てきただろうか。
肉体の限界ぎりぎりのラインで鍛練を続ける彼らにとって、ケガは避けることができない要素なのだろう。肉体的なポテンシャルが低い状態で試合に臨まなければならない。スポーツ選手は誰もがそんな危機を競技生活のうち一度は迎えるのだと思う。
そしてエルビスは今それを迎えている。
このまま崩れるのか。エルビスもそうなるのか。正直言って観念した。

そんな矢先のクワドのコンビネーションだった。
今シーズン初めての。

戻ってきた歓声がカナダ応援団の物だけだったのかどうかわからない。一種の麻痺状態にいたのだろうか、興奮して叫ぶ事も、感動して泣く事もできない。確かに何かを思ってはいたのだが。
この人はここまで戻してきたのだと。クワドのコンビネーションとの関わり方が、他のスケーターと何か違うのだと。
確かに勝負の上では王者と言えなくても、王者に形容したくなるような特別な輝きを放つ人なのだと。
それが見られた。

書きたくはないが、書かずにしらばっくれることもできないことがある。

せっかくヘルシンキまで来たことだし。
案外簡単にメッセージ手渡しできたし。
だめでもともと、「リンクサイドで花束手渡し」にトライしてみようとたくらんで、実はウォームアップの時から場所を移動していた。
しかし。
Kiss & Cryに一番近い入り口に来たものの、ものすごくマナーの悪いことをしているような後ろめたさが押し寄せる。空いている席に座りに行くこともできず、ウォームアップの間中自分の席に戻ろうかどうしようか散々迷っていた。結局1階席の一番上で立ち見状態、そのままでエルビスの演技を見てしまった。
階段を降りる途中、Kiss & Cryに向かってくるエルビスを見て一度足が凍りつく。引き返したい気持ちを抑えて階段を降りてリンクのすぐそばまで行ったものの、あのエルビスに声はかけられない。立ち止まらせて花束を手渡すなんて、とても。
何をしたわけでもないはずなのに、ものすごい罪悪感。フラワーチルドレンに渡すこともできず、花束はリンクに落とした。


終わった………













………ってちょっと待て、まだ終わってない!
まだ最終グループの第1滑走だろうが、勝手に終わらせるな!

考え事は後にしよう。

自分の席へ戻る途中、誰もいない通路で放心していたのはそう長くなかったらしい。席についてもまだ点数が出ていない。後ろの席の方に「あのー、私トリプルとクワドの区別つかないんですけど…」と質問して、さすがにあきれられる(そりゃそうだ)。いや、クワドだったのはわかっていたけど、確信していたけど、確認しておきたかったのだ。
ファンの願望が見せた幻かもしれないから。

点数が出る。後ろの席の方が少し解説してくれた。
「そうですね」と答えはしたが、私にループとサルコーを見分けることはできない。
うすうすわかっていたけど取り返していなかったのか。

会場はまた別の若武者を迎える。


そして若き新王者の誕生―――
エルビスと対照的なあまりの喜びように思わず目がうるんだ私。TV観戦のヤグディンファンの人に見てほしかった。ファンの人にとってはもらい泣き物だっただろう。あれは。

リンクから上がる時に一度後ろを振り返ったウルマノフ。華やかなタンゴの調べにのせて舞う優雅さは、他の誰も太刀打ちできない。それでも。
ウルマノフの点数を見た時点で集中力が切れてしまい、プルシェンコ、ブラシェンコの間はちょっとその。ごにょごにょ。

今さらながらこの世界選手権、得点が出るまでの時間が長い。生観戦の経験が少ない私が書くのも何だが、少なくともオリンピックの時より確実に長い。何かシステムが変わったんだろうか?
テンションを押さえ切れなくなったのか、ブラシェンコの得点が出るまでの間にアメリカの応援団からウェーブが起こり、会場を一周した。おいおい次自分の所のワイスだろうが。日本のウェーブは選手を応援するため、アメリカのウェーブはライバル選手を妨害するためという話を聞いたことがあるのだが、そうでもなかったのか。しかしフィギュアの試合でウェーブを体験するとは思わなかった。

それ以上に長かったのが最終滑走、ワイスの得点が出るまでの時間。アメリカの応援団が手拍子で催促するかウェーブでも起こすかと期待していたが(するなよ)、メダルがかかっているだけにそんなお祭り気分ではなかったか(笑)?

世界選手権は毎年開催されるが、その表彰台は決して同じ光景を繰り返さない。当たり前のことではあるが。
かつていた選手がその場所を去り、いなかった選手がそこにいる。

そして再び表彰台に上った選手も同じ姿を見せることはない。右端にいた少年はプログラムを変えないながらも一年前の面影を忘れさせるほど背丈が伸びて左端に移り、真ん中で泣きじゃくった少年は一年でたくましい青年になっていた。

ウィニングランを終えてリンクから引き上げる時、ヤグディンはもう一度タラソワコーチと抱き合って喜んでいた。表彰式が終わったので観客もまばら、リンクサイドにもほとんど人はいなかったと思う。

おめでとう、ヤグ。


会場からヘルシンキ市内への移動方法は電車、トラム、バス、あとはタクシー。バスを使う人は意外なほど少数で、大会4日目にはすっかり顔なじみになった。しかもこのメンバー、会場での席もなぜかほとんど全員隣近所。
この日は最終のバスを待ちながら、どこから来たのか、どのスケーターが好きなのかという話に。
(多分。ネイティブスピーカー同士でしゃべられると耳が追いつかない。ついでに書くと、彼女達でも教えてもらわないことには話している相手がアメリカ人かカナダ人かわからなかった様子。)

「メープルリーフを持っているからあなたはカナダ人だと思ってた」とは7、8才の娘を連れたアメリカ人の女の人が私に言ったセリフ。私どう見ても東洋人だって(笑)。
この親子、画用紙を掲げて「Go, Michael!」と応援している所がモニターにも映った大のワイスファン。私がエルビスファンだと聞いたお母さん、
「He did what he could.」

そうですね。
エルビスは試合で出せる力の割合がコンスタントに高いスポーツ選手だから。


バスを降りて宿へ向かう途中、オリンピックスタジアムの前で犬を散歩させている人がいた。意外に暖かいヘルシンキ、日本の真冬並みの服装で大丈夫、ダウンを着ているとぜんぜん寒くない。
昼間の雪もやんで、空気が澄んでいるのか月が綺麗。そのまま宿に入りたくない気分だったので、会場の通路で放心しかけて途中で止めた考え事の続きをすることにする。

このシーズンは本当に長かった。アマ続行宣言をした98年9月が1年以上前の事に思えるくらいに。
そういえば。
この時から、フリーにクワドを二つ入れる事を宣言していたっけ?

ちょっと振り返ってみよう。スケートアメリカ、スケートカナダのフリーでは1回しかトライしていなかったので、この話はもう消えたものと思っていた。ところが99年1月、国内選手権からのフリーは大幅な改訂版でしっかりクワド2回に挑戦している。このシーズン、エルビスが出た全試合のショート(途中で別のプログラムに変更している)とフリーの組み合わせ、それぞれの出来を思い出して一瞬頭の中が真っ白になった。

少しずつ目標に向かって上り調子だった。そしてもう少しだったのだ…
ショート→ステップからのクワド、フリー→クワド2回という、9月の時点で言っていた目標に向けて。

曲が決まっていない時点での発言はどのように受け止められるのだろう。とりあえず私はアマ続行の方に完璧に頭が行っていて、「おい病み上がりでそこまで言っていいのか」と、あまり気に留めていなかった。
辛口のコメンテータ−や一般のスケートファンに何を言われようが、やると言ったら本当にやる。試合でトライできる所まで本当に持ってくる。過去にクワド+ダブル、クワド+トリプルのコンビネーションをやり遂げた時にも似たような状態にいたのだろうか。
一つの事をやり遂げるとバーを上げてさらに難度を上げていっていたエルビス。さすがに今回はそのバーが高すぎたということか。
選手生命を脅かすようなケガをしても、将来ライターに「キャリア的に最大の山場」と定義付けられそうなオリンピックを過ぎた後でも、I want to push the emvelopeと言い続けていたその姿勢を本当に貫いていた。
そう思う。ファンの思い込みといわれても。


Kiss & Cryに戻るエルビスの顔は厳しいというよりはむしろ疲れきっているように見えた。
大相撲で「幕内十年」という言葉がある。
幕内力士の引退する時期が決まるのは年齢ではなく幕内にいる期間で、入幕した時の年齢に関わらず10年前後で肉体的、精神的に疲弊しきって寿命を迎えるという意味である。わざわざ大相撲から持ち出さなくてもすべてのスポーツに対して当てはまるだろう。
1990年、17歳から世界選手権に参加しているエルビスは決して遅咲きのタイプではない。
ぎょっとして足が止まるほどの疲労感を漂わせていたエルビス。彼はまだ戦いを続けるだろうか。

スポーツ選手には決して避ける事のできない要素がある。
ケガ。そして肉体の老い。
もしこのまま戦いを続けるのだとしたら、確実に自分の肉体の老いとの戦いが加わる。いやもう始まっているのかもしれない。ローザンヌで頂上に立った彼の演技を見ながら「この男がケガしたり年取ったりしたらどうなるだろうな」とひねくれた想像をしていた、その時を迎える。
常に技術の進歩を目指して突っ走っていた彼が、「今までできていたことができなくなる」肉体の老いを迎える時、どうなっていくだろう。
そんなことを考えてしまう。

考えなければいいのに。

そもそも考えても仕方がない。このシーズンが終わったばかりなのに。
悪いね、勝手に色々考えて。まずお疲れさまと言うべき所を。ゆっくり休…

…休めるスケジュール組んでないんだよなあ………


あーあ。


外で立ち止まってシリアスに考え事をしているのが馬鹿らしくなったら寒くなってきた。急いで宿の中に入る。まだ試合は続く。体を冷やして風邪をひいたら元も子もない。
明日からの試合は午後から始まることだし、とりあえず目が覚めるまで寝るぞ。
おやすみなさーい。

(続く)

追記:
公開練習中に何度もやっていたジャンプ。本番通りの位置にいたのだとしたら、クワドのコンビネーションをきめた所だ…… (気づくのが遅い!)
他の人がリンクサイドで選手にプレゼントを渡しているのを見ても微笑ましく思うのに、人がやっているのを見るのと自分でトライするのは大違い。そりゃ中学生がいきなり大学生レベルのことに挑戦したら無理があるか。

次は普通のフィギュアファンに戻ります(^^;)。
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