鼻・副鼻腔疾患のページ

○鼻出血
 ここでは、いわゆる特発性鼻出血について述べます。
@原因:
 原因としては、単純性と症候性に分けらけます。単純性とは、鼻粘膜を刺激することによって起こるものです。症候性とは、他の疾患があって、それに伴って起こる出血で、鼻腔の炎症、腫瘍、全身疾患として、白血病、血友病、肝臓病、腎臓病、抗凝固薬使用によるものがありますが、外来で受診する鼻出血のほとんどは単純性のものです。単純性鼻出血の誘因として、アレルギー性鼻炎が多い。粘膜が充血して腫れている状態で、水様鼻漏にさらされ、荒れて血管が切れて出血します。 水様鼻漏があると、血液が固まりにくく、止血しにくくなり、また、一度、止血しても血痂が水様鼻漏で溶かされるため、繰り返し出血します。出血部位はいわゆるキーゼルバッハ部位がほとんどです。特に小児では、鼻をかむ習慣がないので、粘膜が荒れて、出血することが多い。
 大人の場合もアレルギー性鼻炎が関係していることが多いが、動脈硬化が関係していることがあります。動脈硬化で血管壁がもろくなっているために起こるのではないかと考えられます。その場合の出血部位は一定しておらず、鼻腔深部からの出血もしばしばあります。
A治療のポイント
○キーゼルバッハ部位(鼻中隔前下方)からの出血の場合
・毛細血管から滲むような出血の場合は、薬液腐食で容易に止血できます。
・比較的太い血管が切れて出血している場合は、助手に鼻鏡で鼻孔を開いてもらい、右手にバイポーラを持ち、左手で吸引管を持ち、血液を吸引しながら、出血部位を確認して、ピンポイントで電気焼灼します。 焼きすぎると太い血管が露出してさらに止血しにくくなることがあるので注意します。 2〜3回焼灼しても、滲むような出血が続くことがありますが、あまり深追いせずに、薬液腐食したり、必要に応じてガーゼタンポンするのがよいと思います。
・小児で電気凝固ができない場合は、薬液腐食したあと、テラマイ軟膏ガーゼで1日くらい圧迫止血するとよい。
○鼻腔深部からの出血
・鼻腔後方からの出血は、その多くが中下鼻甲介後方の外側壁であると記載されています。
・鼻腔内の血液をよく吸引した後、ファイバースコープを入れ、おおよその出血部位を探ります。 血液が溜まっている部位があれば、そのあたりからの出血と考えます。 電気凝固できればよいのですが、通常は困難ですので、ガーゼタンポンします。 短冊状に折ったテラマイ軟膏ガーゼを出血部位と思われる部位に押し込んで、その上に畳を積むように重ねていくのですが、後方に脱落しやすいのでうまく圧迫するのは困難です。。 うまく止血できたら、出血の程度により、3〜7日詰めたままにしておき、血管が固まったと思われるころ、静かに抜去します。 止血できない時はベロックタンポン法という方法がありますが、患者さんはかなり痛がりるし、血圧もドンドン上がって、ますます止血しにくくなります。もし、ベロックタンポンが必要な場合は、入院が必要なので、外来専門医の領域ではありませんので、病院に紹介します。
○意識障害と血管確保
 処置中に迷走神経反射を起こして血圧低下、徐脈を起こすことがあります。軽度の場合は、臥位にして呼びかけを続けると回復してくるが、時に血圧測定不可となり、痙攣を起こすことがあります。処置としては
・血管確保
・補液は乳酸加リンゲル液あるい生理食塩水1〜2リットルを急速投与する。投与量の1/3が血管内に残ると考えられるので、出血量1に対してその3倍の輸液を入れないと喪失循環量は補えないという。維持液はカリウム濃度が高すぎるため、急速投与すると、副作用が出る。
・血圧が極端に下がっている場合は、ボスミン注1/2A(=0.5ml)を生理食塩水100mlに入れ、補液回路の側管から点滴し、血圧の状態をみながら、調整しています。
○高血圧症で鼻出血は起こるか:鼻出血は血管が破れることによって起こるわけで、血圧が高くても血管が正常であれば鼻出血は起こりません。ただし、血圧が高いと止血しにくいのは事実です。鼻出血が止まらないと、緊張して一時的に血圧は上がるものです。降圧剤の持続的な処方の必要性の有無は平常時の血圧をみて始めたほうがよいと思います。
 市村恵一によると「高血圧症患者のかなりの例で動脈硬化病変がみられるため、易傷害性は高まっているものと推定される。・・・こういった症例では中鼻甲介後端付近の蝶口蓋動脈からの出血が多いといわれるが、中には部位の同定に苦しむ例も少なくない。」(専門医通信 第98号)
○抗凝固療法(ワーファリンなど)中の出血
 抗凝固療法中の人が皆、鼻出血を起こすわけではないので、鼻腔粘膜に問題がある場合が多い。止血法は通常と同じで、電気凝固を行うか、ガーゼタンポンを行うが、ガーゼ抜去時に再出血することが多いので、長期のガーゼタンポンが必要である。
○血液検査について:出血傾向を起こす白血病などを心配される患者さんがいますが、その場合は全身に出血傾向の症状が現れます。全身性、持続性の点状出血、紫斑、筋肉内出血、関節内出血の有無に注意します。通常の鼻出血で血液検査をすることがありますが、ほとんどの場合は正常の値でしたが、止血困難例や再発を繰り返す場合には、一度チェックしておくとよい。。
Bオレ流の注意点
・薬液腐食に使用する薬剤について:成書には、10%硝酸銀、クロム酸、三塩化酢酸、トリクロル酢酸などの記載があり、私も硝酸銀、トリクロル酢酸を使用した経験がありますが、一番よいのは、塩化第二鉄水溶液ではないかと考えます。 塩化第二鉄は赤血球のヘモグロビンと反応して、黒く固まって止血効果を高めるのではないかと考えています。 尚、塩化第二鉄を使う方法は、坂部長正先生から伝授されたものです。
 (塩化第二鉄水溶液の作り方は、和光純薬から発売されている「塩化鉄(V)六水和物(塩化第二鉄)」25gを薬品卸で購入します。 塊になっているので、中等大のものを薬液ビンにいれ、水を2〜3ml加えます。坂部長正先生によると、濃いほどよいそうで、塊が溶け残っているくらいがよいようです。)
・ガーゼタンポンをしっかり詰めても止血しない場合は:ガーゼを詰めなおす前に、血圧を測ってみましょう。 血圧が200mmHgもあれば、いくら圧迫してもなかなか止血しません。 血圧が高い時は、血圧を下げましょう。 私は、アダラートカプセル10mgを使用しています。使用上の注意では禁止されていますが、内服では効果発現に時間がかかりますので、噛み砕いて内服していただいています。10分くらいで血圧が下がってきて、出血が止まってくることがあります。血圧が下がり過ぎることがあると注意されていますので、慎重に経過をみる必要があります。
・軟膏ガーゼの作り方:コメガーゼを30cmに切り、テラマイシン軟膏をまんべんなく付けます。 それを4つ折にして、7cmくらいにしたものが使い易いと思います。 シャーレに入れて、冷蔵庫に保存しておきます。 昔、ボイテルヘラを使ってボイテルタンポンを入れる方法を教わりましたが、なかなかうまく入らないし、出血部位をうまく圧迫できないので、最近はやりません。
・処置後の投薬について:成書には、「副鼻腔炎や中耳炎の予防のため、抗生物質を投与する」と書かれていますが、前鼻孔からのタンポンでは抗生物質を投与しなくても副鼻腔炎や中耳炎を起こしたことはないので最近は投与していません。 止血剤のアドナやトランサミンを投与したこともありますが、あまり効果ないと思うので最近は投与していません。 それよりも鼻水が出ると、血痂が溶けて再出血の可能性があるので、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー剤を投与するようにしています。
・オスラー病について:キーゼルバッハ部位を中心に毛細血管拡張が起こり、出血を繰り返します。 市村によると、エストロゲン内服は有効率は高いが副作用がある。 レーザーなどによる焼灼は、効果は短いが操作が簡単なので、定期的に反復する。 鼻粘膜皮膚置換術を行うと出血頻度が激減する。(市村恵一:Nikkei Medical 2004年5月号63-64p)

 オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)は反復性鼻出血、末梢血管拡張、動静脈奇形といった症状を有する遺伝性疾患である。有病率は5,000〜8,000人に1人。endoglin変異による1型とALK1変異による2型に分けられ、血管の弾性板や筋層の欠損を背景にした血管壁の脆弱性が根底にある。
 中等度以上のオスラー病の止血には、電気凝固やガーゼ圧迫がほぼ無効であり、アルゴンレーザーや超音波凝固による止血法が知られている。
 アルコール注入による硬化療法は特別な装置を要せず、外来でも容易に施行できる上、強力な止血作用が得られる。
 近年、エストロゲンの鼻粘膜塗布が粘膜の扁平上皮化を促進し、出血低減に有効であることが報告された。
 トラネキサム酸の投与は新たな血管形成の遺伝子レベルでの作用機序ならびに臨床試験での長期的効果も確認されている。
  (内田 哲郎:日耳鼻119:874-879,2016) 2016.9.2記

(2009.4.27 ENTONI No.98 外来ですぐに役立つ 鼻出血の処置 を参考にして改訂しました)
 2011.11.12 改訂

 私の30年の経験で、オスラー病は3例で、比較的稀な疾患である。顔面などに毛細血管拡張がある。経験した症例では、毎日、出血部位をバイポーラで焼灼してみましたが効果がなく、結局患者さんが自分でボスミン綿球で処置するようになりました。

目次ヘ戻る

 ○急性副鼻腔炎
 急性副鼻腔炎とは、「急性に発症し、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽といった呼吸器症状を呈し、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患」と定義されている。症状が1〜3ヵ月持続している場合には亜急性と呼ばれることがあるが、臨床的にはあまり使われず遷延性とされる。
☆感染症の治療のポイントは @排膿 A抗菌薬の使用 B再感染の予防 です。
@排膿:
 自然孔からの排膿を促進するため、鼻処置、副鼻腔自然口開大処置が基本である。鼻腔にボスミン、4%キシロカインを噴霧した後、ボスミンを浸した綿棒で中鼻道をぬぐって、数秒間をおいて吸引すると、中鼻道が広がって自然孔が開大される。
 鼻閉が続いていれば、炎症の遷延化を起こしやすい。鼻閉の改善のためには、短期的には、血管収縮剤の点鼻が有効である。私はトラマゾリンを頻用している。
 上顎洞穿刺・洗浄が効果あることは間違いないが、疼痛が伴うこと、手技が煩雑であること、1回のみではあまり効果がなく数回行う必要があることから、行うことはほとんどないが、時に著効を示すこともある。上顎洞穿刺直後には、吸引により膿汁または空気が吸引されることを確認し、粘膜下や血管内に注入することのないよう十分な注意が必要である。従来は生理食塩水で洗浄後、抗生剤などを注入していたが、最近は、最初に生理食塩水で洗浄して、問題がなければ、生理食塩水の中にイソジンガーグルを50倍程度に希釈するように加え、それで洗浄して、洗浄液が上顎洞に残った状態で穿刺針を抜くようにしている(オリジナル?)。もちろん、抗生剤の注入は細菌の種類によっては有効であり、安全性も高いが、すべての菌に有効ではないのに対し、イソジンガーグルは消毒液なので、ほとんどの菌に効果が期待できるのではないかと考えている。
 ESS(鼻内内視鏡下手術)後の患者さんの場合も、拡大された自然孔より洗浄管を入れて、イソジンガーグル希釈液で洗浄しているが、経過は良好である。
 上顎洞真菌症には、2%以下のホウ酸水で洗浄すれば、防黴効果があると考える(オリジナル?)が、まだ実施したことはない。
A抗菌薬の使用:
 サーベイランスによると、急性副鼻腔炎の起炎菌として、肺炎球菌(29.4%)、インフルエンザ菌(21.5%)、A・B群溶レン菌(9.5%)、CNS(8.9%)、黄色ブドウ球菌(8.6%)であった。成人では、黄色ブドウ球菌、腸内細菌群が増加している。遷延化および慢性化にともなってインフフルエンザ菌の検出率が上昇するという。
・肺炎球菌では、PSSP:40.4%、PISP:39.7%、PRSP:19.9%とペニシリン耐性菌が59.6%に増えている。
・インフルエンザ菌では、BLPAR:6.1%、BLNAR:23.1%とABPC耐性菌が増加している。
・肺炎球菌に対しては、ケテック>ファロム>オーグメンチン=フロモックス=メイアクトが有効である。
・インフルエンザ菌に対しては、ニューキノロン剤≫メイアクト>ミノマイシン>フロモックス=ケテック=ジスロマックが有効である。
・ブドウ球菌に対してはケテック>ファロム>セフゾン=クラビット>メイアクト=シプロキサン>フロモックスが有効である
・私は、小児には、まず、フロモックスまたはメイアクトを使用し、効果がなければ、抗菌力以外の独特な効果を期待して、クラリスを使用し、さらに効果がなければ、バクシダールを使用している。2010年に発売されたオラペネムDSもかなり効果が期待できるし、保険診療上、副鼻腔炎の適応症がとれていないが、オゼックスDSも有効性が高いと思われる。
・成人においては、ファーストチョイスとして、いわゆるレスピラトリーキノロン(クラビット、オゼックス、スオード、グレースビット、ジェニナック、アベロックス)を使用している。それで効果が得られない場合はフロモックスまたはメイアクトを使用し、それでも効果がない場合は、クラリスまたはルリッドの少量長期投与を考慮するようにしている。
B再感染の予防:
 有効と思われる抗生剤を投与すれば、少しずつでも改善していくものであるが、小児では繰り返し風邪をひくため、症状の軽快・増悪を繰り返す場合が多い。寝冷えなどしないよう、注意が必要である。
 アレルギー性鼻炎が合併している場合が多いので、その治療も併せて行う。

○学会の小児急性鼻副鼻腔炎治療アルゴリズムをみたい方はこちらをご覧ください。
○学会の成人急性鼻副鼻腔炎治療アルゴリズムをみたい法はこちらをご覧ください。

○私の急性副鼻腔炎診療ガイドライン(小児)

○私の急性副鼻腔炎診療ガイドライン(成人)

   平成25年7月11日改定

付.点鼻容器について
 安価な点鼻容器では、液が霧状に噴霧されないので不都合が多い。当院では、ターキー点鼻用噴霧容器30ml (TU-71) \220 (写真右)を買ってもらって、詰め替えて使用してもらっている。

目次ヘ戻る

○慢性副鼻腔炎
 副鼻腔炎の症状が3ヶ月以上持続している場合には慢性副鼻腔炎とされる。
☆感染症の治療のポイントは @排膿 A抗生剤の使用 B再感染の予防 です。

@排膿:
 
副鼻腔炎の慢性化の要因として、自然孔の閉塞が大きく関与していることは明らかである。最近、ESS(内視鏡下鼻内手術)が広く行われ、篩骨洞が開放され、上顎洞自然孔が大きく開放されると、慢性上顎洞炎が治癒に向かうことが多いことからも、自然孔の閉塞が慢性化の主因となっていることを示唆している。
 自然孔の閉塞は、個人の持つ局所の解剖学的構造やアレルギー体質が関与することが多く、保存的な鼻処置などでは解決が困難である。上顎洞穿刺(Schmidt探膿針による)洗浄・Proetz置換法、YAMIKカテーテル法などによる洗浄法があるが、自然孔の閉塞が解除されない状況では、効果は一時的なものと考える。
血管収縮剤:粘膜の腫脹が強い場合には、血管収縮剤の点鼻により、粘膜の腫脹をとり、鼻漏の排膿を促すことは効果的である。私はトラマゾリンを頻用している。
A抗菌薬の使用:
 検出菌について、いろいろなデータがでているが、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、その他のグラム陰性桿菌(緑膿菌他)、嫌気性菌などが主であるという(図説より)。
 サーベイランスによると、
 黄色ブドウ球菌に対しては、ケテック>ファロム>セフゾン=クラビット>シプロキサン=メイアクト>フロモックスが有効である。
 インフルエンザ菌に対しては、クラビット=シプロキサン≫メイアクト>ミノマイシン>フロモックス>ケテック=ジスロマックが有効である。
 緑膿菌に対しては、シプロキサン>クラビットが有効である。
 以上のデータから考えると、ファーストチョイスは、ニューキノロン剤(クラビット、シプロキサン、オゼックス、スオード、グレースビット、ジェニナック、アベロックス)、次にセフェム系(メイアクト、フロモックス)、ケテックなどが考えられる。
マクロライド療法:マクロライド療法(14員環マクロライド薬の少量長期投与)は1990年に洲崎らによって慢性副鼻腔炎に対する有効性が報告されて以来、第一線の耳鼻咽喉科診療で試みられ、いまや慢性副鼻腔炎に対するfirst lineの治療法となっている、という。(飯野ゆき子:日耳鼻114)
 マクロライド療法の有効性は、マクロライド本来の抗菌作用ではなく、抗炎症作用、免疫調節作用、粘液過剰分泌抑制作用などによると考えられているという。
○慢性副鼻腔炎に対するマクロライド療法の要点(日本鼻科学会 副鼻腔炎診療の手引きより)
・使用薬剤:14員環マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、ルリッド、クラリス(クラリシッド))
・適応となる副鼻腔炎のタイプ:過分泌症状が顕著な慢性副鼻腔炎および手術療法後の慢性副鼻腔炎
・一日投与量:原則として常用量の半量とする。ただし以下のような投与法も念頭に置く
         1)臨床症状が強い場合には常用量で開始し、経過をみながら半量に切り替える
         2)急性増悪時には常用量に切り換える。あるいは他の抗菌薬に変更する。
・投与期間:原則として3ヵ月を目安とする。
        十分な改善が得られた場合はいったん投与を中止して経過を観察する。
・効果判定:原則として自覚症状の改善を重視する。
        X線所見とはズレが生じることも多い。
・再投与:再投与しても、前回と同様の効果が得られる。
・効果不十分な病態:1)T型アレルギー性炎症が主体である症例
             2)気管支喘息を合併している症例
             3)中鼻道が高度に閉塞している症例
             4)大きな鼻茸を有する症例
             5)長期投与中に急性像悪を生じた症例
・他の治療法との併用:内視鏡下副鼻腔手術、YAMAKカテーテル法、副鼻腔洗浄療法などを症例に応じて組み合わせると、マクロライド療法の有効性が高まる。
・臨床上の留意点:抗アレルギー薬など、他剤と併用する際には薬剤相互作用に留意する。



○慢性副鼻腔炎に対するマクロライド療法のポイント
  14員環マクロライドを常用量の半量で投与する。臨床効果は2〜4週で発現し、2〜3ヵ月でプラトーに達するので、投与が無効な場合は速やかに他の治療法に変更する。有効症例でも3〜6ヵ月の投与でいったん治療を打ち切り、経過を観察する。マクロライド療法の中断により再燃する症例には再投与で同様な効果が得られる。効果判定は原則として鼻漏・後鼻漏などの自覚症状の改善を指標にする。副鼻腔陰影の改善には時間を要するため、X線やCTは臨床効果の判定には不適当である。
 マクロライド療法の効果が期待できない病態に、大きな鼻茸や中鼻道の高度閉塞、急性増悪・急性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎などがある。このうち、大きな鼻茸や中鼻道の高度閉塞がある症例では、鼻内視鏡手術により副鼻腔の換気・交通路を作成することで、術後のマクロライド療法による治療効果が増大する。マクロライド療法で完治しない症例や、再燃を繰り返す症例も手術療法の適応である。
○急性増悪や急性副鼻腔炎への対応
 急性副鼻腔炎の主要起炎菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌はそのほとんどが14員環マクロライドに耐性化しているため、急性増悪や急性副鼻腔炎には効果が得られない。したがって急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版を参考に、重症度と耐性菌の危険因子の有無に応じた薬剤選択を行う。5歳以下の小児、保育園児、1ヵ月以内の抗菌薬の使用などが耐性菌感染の危険因子である。
○小児のマクロライド療法
 小児の鼻副鼻腔炎の特徴に、細菌感染の要素が強く急性増悪を繰り返すこと、検出菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌)が成人と異なること、鼻茸などの非可逆的病変が少ないこと、成長とともに自然治癒傾向があることがある。マクロライド療法はあくまで膿性鼻漏が1〜3ヵ月持続する慢性例を対象とし、急性増悪を繰り返している症例では、感受性を考慮した他の薬剤選択が必要である。投与期間もできるだけ短縮し、多少の鼻漏や副鼻腔陰影が残っていても投与を中止し良い。小児の鼻副鼻腔炎は臨床症状と経過、鼻内所見で判断し、画像診断不要である。したがって、治療効果の判定は鼻漏・後鼻漏などの自覚症状の改善を指標にする。
 (清水猛史:日耳鼻120 P63-63 2017 に要領よく書かれていたので、、抜き書きさせていただきました)

ネブライザー療法:数日に1回、ネブライザーで抗菌薬を投与することが、どれだけ効果があるかは不明である。但し、併用する血管収縮剤、ステロイド剤が鼻腔全体に行き渡って、自然孔の開放に効果があると思う。
消炎酵素薬:メーカーの示すデータを信ずれば、多少の効果があるのかもしれない。私はムコダインをメインに使用している。
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬:最近の副鼻腔炎においては、アレルギー性鼻炎の合併を疑わせる所見がみられることが多い。必要に応じて、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の併用が有効である。
B再感染の予防:
 急性副鼻腔炎と同じ。 
C手術について:     
 篩骨洞は一度慢性炎症を起こしてしまうと、自然孔が狭窄してしまうため、保存的治療では治癒困難である。最近はESS(内視鏡下鼻内手術)が進歩して、篩骨洞をきれいに開放することができるようになった。蜂巣の隔壁を丁寧に截除鉗子で除去して篩骨洞を単一の空洞にして、排膿しやすくすることが大切である。浮腫状の粘膜は自然吸収されるのに時間がかかるので、なるべく鉗除するのが望ましい。骨膜は保存したほうが、後の粘膜の再生に有利である。
 上顎洞の膜様部を鉗除して、自然孔を拡大しておくと、上顎洞の慢性炎症も徐々に治まってくるが、できれば浮腫状の粘膜は除去しておいたほうが治癒が早い。
 上顎洞単独病変の場合は、古典的なCalldwell-Luc手術により、上顎洞を清掃し、自然孔を拡大する方法が一番治癒が早く確実と考えるが、内視鏡下に自然孔を拡大し、洗浄等の保存的治療でも治癒の可能性があると思われる。 いずれにしても、いかにきれいに洞を開放するかは、術者の手腕にかかっており、誰がやっても同じ結果が得られるとは限らない。
 また、術後治療が大切であり、創が治癒するまで、感染を起こさないよう、慎重に抗菌剤の投与等が必要である。
 また、アレルギーが関与している場合(好酸球性副鼻腔炎)には、感染性の鼻漏は治まっても、再び、粘膜が浮腫状になってくることが多く、止めがたいものである。                                       平成23年6月23日改訂

目次ヘ戻る

○副鼻腔真菌症
(1)慢性非浸潤性(寄生型)副鼻腔真菌症
 真菌塊(fungus ball)を形成する。上顎洞に発生することが多い。
@症状
 鼻漏、頬部違和感、鼻閉などが主症状であることが多く、臨床症状がない場合もある。
A検査・画像診断
 鼻単純X線では、特異的な所見はない。
 副鼻腔CTでは、@一側性の病変 A内部不均一 B骨肥厚 C石灰化 Dair像 E自然孔閉鎖 F骨破壊 など
 検出頻度が高い菌はアスペルギルス、カンジダ、ムコール である。
B治療
 手術で副鼻腔を開放することで良好な結果が得られる。
(2)急性および慢性浸潤性副鼻腔真菌症
 ステロイド、免疫抑制剤、抗悪性腫瘍薬などの使用により免疫が低下した患者において日和見感染として発症することが多い。両者とも組織浸潤をともなうが、慢性浸潤性の場合は粘膜内浸潤にとどまることが多い。
@症状
 鼻症状だけでなく、発熱や頭痛、頬部痛などの症状を伴うことが多く、病変の広がりにつれて多彩な症状を示す。
A検査・画像診断
 鼻腔内所見では灰白色の粘液性あるいは膿性の鼻漏と腫脹した鼻粘膜を認める。
 副鼻腔CTでは鼻・副鼻腔内に真菌の石灰沈着や軽度から広範な骨破壊像を認める。
 真菌の菌体成分であるβ-Dグルカンの血中濃度が深在性真菌症の臨床的な活動性を定量的に示し、診断および臨床経過の指標として有用であると報告されている。しかし、ムコールが原因菌の場合は細胞壁のβ-Dグリカンが乏しいため、上昇しない。
B治療
 早期に診断し、手術による病変の除去と6か月以上の抗真菌薬の全身投与を行う必要がある。また、誘因となった基礎疾患の是正が必要である。全生存率はおおむね50%とされており予後は不良である。
(3)アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(allergic fungal rhinosinusitis:AFRS)
 副鼻腔で非浸潤性に増殖した真菌に対するT型・U型のアレルギー反応やT細胞応答などによる。ニカワ状ともいわれる粘稠な好酸球性ムチンの形成が、この病態の増悪因子であると考えられている。
   (太田伸男・鈴木祐輔 日医雑誌 第141巻 第10号 P2195-2198 より抜粋)
   (吉川衛:副鼻腔真菌症の診断と予後 日耳鼻 118:629-635,2015)

 目次ヘ戻る

○好酸球性副鼻腔炎
 マクロライドなどの抗生剤療法や内視鏡下副鼻腔手術などを行っても難治な慢性副鼻腔炎があることが注目され、その鼻茸中に著明な好酸球浸潤がみられることから、2001年に好酸球性副鼻腔炎という名称が提唱された。ここでは、石戸谷淳一:日耳鼻 2008;111:712-715 に明快に書かれていたので、転載させていただきました。

@臨床的特徴
好酸球性副鼻腔炎 従来型の慢性副鼻腔炎
症状 早期より嗅覚障害、鼻閉など 鼻汁、後鼻漏、鼻閉など
鼻内所見 粘稠性鼻漏、多発性鼻茸、中鼻甲介(中鼻道、嗅裂)の病変が強く、下鼻甲介は所見が少ない。 膿性鼻汁、中鼻道鼻茸
画像所見(副鼻腔陰影) 初期には篩骨洞優位 初期には上顎洞優位
血液所見 好酸球増多 特になし
アレルギー性鼻炎の合併 経過中に鼻炎様症状があることが多い。IgE値はさまざまである。 少ない
気管支喘息の合併 成人発症の非アトピー型が多い
アスピリン喘息を合併する場合は難治、Churg-Strauss
少ない
マクロライド療法 効果は不明 有効
全身性ステロイド 再発例に著効(局所ステロイド薬は無効) 効果は不明
術後の鼻茸再発 高率 少ない
鼻茸の組織学的所見 著明な好酸球浸潤、リンパ球浸潤、基底膜肥厚 リンパ球浸潤、鼻腺の増生

・鼻茸を合併した副鼻腔炎のうち末梢血好酸球比率が6%以上かつ後部篩骨洞および嗅裂部に陰影を認める場合、好酸球性副鼻腔炎は感度84.6%、特異度92.3%で診断される。

A治療方針
(1)手術(ESS):
   篩骨洞・蝶形骨洞・上顎洞を大きく開放し必要に応じて鼻中隔矯正も追加
   特に中鼻甲介周辺の処置が重要
            ↓
   術後の局所療法が効果的に行えるような鼻・副鼻腔形態を作る
(2)術後の維持療法:
   ここの患者の症状に応じて頻度を調整し、必要に応じて2)、3) を追加する。
   1) 鼻洗浄/噴霧ステロイド・・・維持療法の基本
   2) 少量の経口ステロイド(セレスタミンなど) (数日〜2週間)
   3) 鼻閉に有効な抗アレルギー剤(キプレス、オノン、IPD など)
(3)増悪・再発時:
   短期間の経口ステロイド(プレドニゾロン30mgから漸減、2週間)
・難治性喘息を合併した好酸球性副鼻腔炎患者にヒト化抗ヒトIgEモノクロナール抗体のオマリズマブを投与したところ、好酸球性副鼻腔炎が劇的に治った症例を1例経験しました。(石戸谷淳一:鼻アレルギーフロンティア 2010 Vol.10/No.3)
B好酸球性副鼻腔炎の治療経過
 セレスタミン2錠(分2)を処方する。すると粘調な鼻汁は軽減し、鼻茸も縮小してくる。嗅覚障害も改善してくる。これが典型的な好酸球性副鼻腔炎の経過である。セレスタミンにて眠気の副作用がある場合は、プレドニン(5mg)4錠(朝)に変更する。まず2週間投与し、鼻腔内の所見を観察後、軽快しない場合にはプレドニン6錠に増量する。これでほとんどの症例が反応する。症状の改善を認めてきたならば、セレスタミン1錠もしくはプレト゜ニン2錠(朝のみ)に減量していく。その後数ヵ月間、セレスタミン・プレドニンの服用を隔日に、もしくは2日置き、3日置きと延長しながら継続し、その途中でESSを勧めている。経口ステロイド内服の期間が2ヵ月を越えた頃から、朝開院後すぐに来院してもらい、血中コルチゾールを測定する。異常がなければ治療を継続する。(藤枝重治、日耳鼻117:96-101)

目次ヘ戻る

○鼻ポリープ
・気管支喘息を合併した副鼻腔炎の鼻茸では好酸球浸潤が顕著にみられる。
・鼻ポリープ切除術は、好中球優位な鼻茸は約90%以上で経過良好です。一方、好酸球優位な鼻茸では、術後1年以上経過すると約半数以上に再発が認められます。好酸球優位な鼻茸では、術後にセレスタミンを1日に朝晩2回、2週間投与し、次の2週間は1錠とし、さらに次は2日に1錠をもう1ヶ月くらい投与します。
・後鼻孔ポリープの特徴は上顎洞粘膜から出るポリープが1番多く、それが自然孔を通して後鼻孔のほうに成長していくのが特徴です。また、後鼻孔ポリープは子供に多い。手術は、鼻ポリープだけを除去すると再発しますから必ず上顎洞内の基部を掻爬しています。(鼻アレルギーフロンティア Vol4 No.1 2004 p10-20)  平成16年7月30日記

目次ヘ戻る

○アレルギー性鼻炎
@有病率:図説(馬場廣太郎先生)によると、通年性アレルギー性鼻炎の有症率は19.8%、スギ花粉症18.1%、スギ以外の花粉症11.6%でいずれかのアレルギー性鼻炎の有症率は31.6%であるというから約3人に1人はアレルギー性鼻炎ということになるが、症状が強い人はそれほど多くないと思う。アレルギー性鼻炎では、自然治癒は少ない。特にスギ花粉症の自然治癒率は数パーセントといわれている。
A年齢分布:10歳代に通年性アレルギー性鼻炎が多く、30歳代、40歳代に花粉症が多いという。
B遺伝:両親ともに有症者の場合46.8%、父親のみ有症者の場合25.9%、母親のみ有症者の場合30.6%、両親とも無症者の場合13.7%に発症するという。
C喘息の合併:成人で10%、小児で30%に喘息の合併が認められる。逆に喘息にアレルギー性鼻炎が合併する頻度は、成人で60%、小児で75%という。
Dアレルギー検査:
・皮膚反応:スクラッチテストが簡便である。27G注射針で、約3cm間隔にやや深く刺し、キズ口を広げるように、はねるようにしている。キズ口にスクラッチエキスを1滴垂らして、15分後に反応をみる。アレルゲンエキスは種類が限られ、鳥居薬品から発売されているのは、ハウスダスト、ダニ、花粉類(アカマツ、アキノキリン草、カナムグラ、カモガヤ、キク、クロマツ、スギ、ヒメガマ、ブタクサ、ホウレン草、チモシー、ヨモキ゛)である。
保険診療上は、アレルゲンテスト16点+アレルゲンスクラッチエキス(1mlで5,272円)(0.05ml使用して263.6円)で、一度に15種類まで認められている。
・特異的IgE抗体検査:血液を採って、検査センターに送ると1週間程で結果がでる。検査できる花粉の種類はスクラッチテストよりはるかに多い。
保険診療上は、1種類につき、110点、一度に13種類まで認められるが13種類検査すると患者負担金は4290円になる。
E治療:
A.根本的な治療(体質改善)法
@減感作療法:原因物質(アレルゲンエキス)を少しづつ増やして注射して、アレルギー体質を改善していく方法であるが、1週間に1〜2回づつ1年以上注射して、改善率50〜80%といわれている。
 現在、市販されているアレルゲンエキスは、ハウスダスト、アカマツ、スギ、ブタクサ、ホウレン草のみである。
 煩雑なため、一部の病院でのみ行われている。
B.一時的に症状をとる方法
@内服薬
a)抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
 1日1〜3回、内服することにより、くしゃみ、鼻水、鼻閉を抑えるが、鼻閉に対する効果は弱い。副作用として眠気が出ることがある。
 抗アレルギー薬は、十分な効果が出るまで1〜2週間かかるので、「かかったかな」と思ったら、早めに飲み始めることが勧められている(季節前投与)。

主観的評価に基づく経口抗アレルギー剤の特徴    (1日薬価は2013年3月現在)
発売年月 薬剤名 1日薬価 用法 小児用製剤 有効率
(小児有効率) 
特徴
1983.2 ゼスラン
=ニポラジン
16.4円 1日2回 あり 54.8%
(59.1%) 
眠気が少しある・抗ヒスタミン作用が強い・安価
1983.2 ザジテン 117.8円 1日2回
(朝食後及び就寝前)
あり 59%
(シ67.9%)
(DS69.4%) 
眠気がやや強い・効果まずまず
1986.6 アゼプチン 86.0円 1日2回
(朝食後及び就寝前)
あり 49.8%  小児に使いやすい・効果まずまず
1987.6 セルテクト 121.4円 1日2回
(朝及び就寝前)
喘息用のみ 56.8% アレロックに移行中
1991.3 ペミラストン
=アレギザール
75.8円 1日2回
(朝食後及び夕食後又は就寝前)
あり 51.1%
(59.7%) 
眠気がない・効果まずまず
1993.8 ダレン
=レミカット
100.0円 1日2回
(朝食後及び就寝前)
なし 43.5% 眠気がやや強い・効果もやや強い
1994.6 アレジオン 146.0円 1日1回 あり 47.7% 眠気が少ない・効果まずまず
1995.4 アイピーディ 167.1円 1日3回
(毎食後)
あり 57.9%  眠気がない・効果が出るのに時間がかかる
1995.6 オノン 247.6円 1日2回
(朝食後及び夕食後)
あり 54.5%
〜61.2% 
眠気がない・鼻詰まりに効果がある・高薬価
1996.6 エバステル 107.3円 1日1回 なし 通年性54%
スギ50% 
眠気が少ない・半減期が長いので、徐々に効いてくる
1998.9 ジルテック 109.9円 1日1回
(就寝前)
あり 49.6% 眠気が残ることがある・鼻づまりにやや効果がある?
2000.5 バイナス 273.0円 1日2回
(朝食後及び夕食後又は就寝前)
なし 66.7% 眠気がない・鼻詰まりに効果がある・高薬価
2000.10 タリオン 105.8円 1日2回 なし 63.6%  眠気が少ない・効果まずまず
2000.11 アレグラ 151.2円 1日2回 なし  不明 眠気が少ない・効果まずまず
2001.3 アレロック 120.4円 1日2回
(朝及び就寝前)
なし 62.9%  眠気がやや強い・効果もやや強い
2001.6 シングレア
=キプレス
232.9円 1日1回
(就寝前)
あり 不明  眠気はない。鼻詰まりに効果がある。
2002.9 クラリチン 99.4円 1日1回
(食後)
あり 52.7%  眠気が少ない・効果まずまず
2010.12 ザイザル 111.8円 1日1回
(就寝前)
なし 49.6%  ジルテックの改良型で眠気が少ない。効果まずまず。
 2013.2  ディレグラ 248.0円  1日2回
(朝夕空腹時)
なし  不明   アレグラに鼻閉に効果のある塩酸プソイドエフェドリンを配合した製剤です。
 2016.11  デザレックス 69.4円  1日1回 なし
(12歳以上) 
不明  眠気がない
クラリチンの改良型
2016.11  ビラノア 79.7円 1日1回
(空腹時投与)
なし  不明  眠気がない
海外では2010年9月発売
 2017.11  ルパフィン 67.5円  1日1回 なし
 (12歳以上) 
不明  傾眠7.8%で眠気がでることがある。
代謝されてデスロラタジンに変化する。

・製薬メ−カーの公表している有効率は43.5%〜66.7%と違いがあるが、試験の条件が異なっているため、単純には比較できないが比較試験のデータもあり、一般に新しい薬のほうが有効率が高いことになっている。 いずれにしても有効率は50%前後で、有効と無効が半々である。
・大阪医大の兵佐和子氏によると、アレグラ、ジルテック、クラリチンを内服開始後2日間の総合的な自覚症状改善度は (第16回日本アレルギー学会春季臨床大会)

+:有為に改善  
くしゃみ 鼻汁 鼻閉 鼻のかゆみ 眼のかゆみ 涙目
ジルテック
アレグラ
クラリチン

・副作用の眠気についても、0.17%から13.6%と開きがあるが、試験の条件が異なっているので単純には比較できない。
・薬価が比較的高いので、原則として抗アレルギー剤の併用は保険診療上、認められていない。
 但し、ゼスラン=ニポラジンは薬価が安い(1錠8.2円)ため、他の抗アレルギー剤と併用が容認されている。ゼスラン=ニポラジンと他の抗アレルギー剤を併用して、有効率7〜8割程度と考えてよい。
・花粉症の治療では、初診時、抗アレルギー剤+ゼスランで治療を開始するが、3人に1人は症状を十分に抑えることができないことがあり、抗アレルギー剤+セレスタミン(抗ヒスタミンとステロイドの合剤)になってしまうのはしかたのないことでしょうか。

b)ステロイドホルモン(セレスタミン等)
 強い薬なので、格段に効果が強い。長期に服用すると、顔が丸くなる、高血圧症、糖尿病などの副作用が出るので、特に症状の強い時だけ使用するようにしたい。
 セレスタミンは抗ヒスタミン剤のポララミンとステロイドの合剤であり、頻用される。(私は、プレドニゾロンの15mg/日よりもセレスタミン2錠/日のほうが効くという印象です。(福井大学教授:藤枝重治 Medico Vol.36 No.2))
 その他、ステロイド単独の製剤として、プレドニンなど多種ある。


A鼻へスプレーする薬(抗アレルギー剤・ステロイド)
 抗アレルギー剤の点鼻液が各種あるが、鼻閉にあまり効果なく、使用するメリットが少ないので、私は使用しない。
 ステロイド点鼻液(リノコート、アルデシンAQネーザル、フルナーゼ、アラミスト、ナゾネックス、エリザス他)は、鼻閉他に効果があり、副作用も、鼻にだけ主に作用するのでほとんど問題ないとされている。






B一時的に鼻の通りをよくする薬(血管収縮剤)(トラマゾリン、ナシビン、ナーベル、ブリビナ)
 血管を収縮させて、一時的に鼻粘膜の腫脹をとって、鼻閉を改善する。使用後、5分程度で効果が現れ、5〜6時間持続する。
 長期連用により、症状が増悪すると一般には記載されているが、1日3回以内の使用であれば、長期に使用しても、ほとんど問題ないと考える。
 3歳以下の乳幼児には使用禁止となっているが、やむを得ず使用しなければならない場合は、生理食塩水などで2倍希釈して使用している。
 コールタイジンはナーベルと経口ステロイド剤の合剤であるが、症状が非常に強い時に使用することがある。

 私は、通常、初診時には、効果があると思われる内服薬、ステロイド点鼻液、血管収縮剤をセットで処方し、実際に使用してみて、患者さんに合ったものを選んでもらうようにしている。人によっては、内服のみでよいこともあり、また、ステロイド点鼻のみを希望される場合もあり、また、鼻閉時に血管収縮剤をスポット的に使用されるだけ方もあり、様々である。

C.その他の治療法
@トリクロール酢酸法
 鼻の粘膜に80〜70%トリクロール酢酸を塗布すると、粘膜が凝固し、1〜2週間程度で剥がれ、数カ月間、鼻水、鼻閉が改善する。塗布した後、一時的に鼻がピリピリするが、簡便かつそれなりに効果もある。

Aレーザー
 鼻の粘膜の表面を1〜2mm焼灼して、鼻水、鼻閉を改善する。1年程度で、再び、粘膜の腫脹が起こるので、再発する。鼻中隔彎曲などがあって、極度に鼻が狭い人では深部の焼灼が困難である。
 東京医大の荒木進によると、「アレルギー反応が既に起こっている場合は、たとえレーザーで表面を焼いても、効果は半減してしまう」そうで、レーザー治療は花粉症では本格飛散前に行うべきで、つまり患者さんは、症状がまだない時期に予防的にレーザー治療を受けに耳鼻咽喉科を受診しなければなりません。
 1999年から2001年のシーズン前にレーザー治療を受けたスギ花粉症患者11人の有効率を、日記ではなくVAS(Visual Analog Scale)で評価してみました。症状の改善を見たものから、25%まで悪化したものを有効と定め有効率を求めると、鼻汁については81.8%、くしゃみは100%、鼻閉は90.9%とかなりよい成績を示していますが、これを同時期に抗アレルギー薬を服用した群では、鼻汁は57.1%、くしゃみは67.3%、鼻閉は77.6%ですから、レーザー治療のほうが有効と思われますが、統計学的有為差はくしゃみでしか出ませんでした。したがって、トータルに考えると、初診の花粉症患者に積極的にレーザー治療を勧める根拠はないということになります。」(荒木進:medical corner Vol.115 No.1)
 レーザー鼻粘膜焼灼術が外来手術として行われるが、永続的な鼻閉改善には下鼻甲介粘膜広範切除術が必要である。(大久保公裕 松根彰志 日医雑誌 第141巻・第10号/平成25年1月 P2167-2171)
 高価な装置が必要なため、当院では行っていない。

Bハーモニックスカルペル
 超音波メスで下鼻甲介を焼灼する方法である。

Cアルゴンプラズマ
 原理としてはアルゴンガスを高周波電流で発火させ、そのジュール熱により粘膜を凝固させる方法である。
 利点として
 1)広く浅い均一な凝固面を作成できること、すなわち治療時間が少なくてすみ、術者の経験による仕上がりの差も少ない。
 2)非接触型の凝固療法であるため、視野が良好で出血が少なく、日帰り手術が可能である。
 3)レーザー光を発しないため保護眼鏡が不要である。
手術時間は両側で5分程度である。
 効果に関して、Fukasawaらの報告によれば、手術の1ヵ月後には、くしゃみの59.3%、鼻漏の61.3%、鼻閉の97.5%、1年後でもくしゃみの75.0%、鼻漏の60.0%、鼻閉の75.0%の症例で有用であった。(戸叶尚史: 専門医通信 第109号)

Dステロイドホルモン注射
 ステロイドホルモン(ケナコルトA)の筋肉注射を1回すると1カ月程度効果が持続して、症状が改善するが、副作用として注射部位が陥没したり、女性の場合、生理が不順になったりすることがある。注射部位の陥没で医療訴訟になったケースもあります。ただし、30年以上ケナコルトAの筋注を続けた経験のある医師によると、副作用はなかったそうです(physician0307,m3.com,2011/8/10)。
 日本耳鼻咽喉科学会の医事問題委員会によると、ケナコルトの下鼻甲介粘膜注射で失明するという事例が九州で1件、近畿で数件あり、危険性の高い治療法と報告されているそうです。
 m3の掲示板から、自分がケナコルトA筋注を受けている医師の経験談を引用してみました。
 「私自身が重症の花粉症患者です。今年は朝から目が腫れ上がって診療さえできません。何よりも医師自身が花粉症症状満載で診療しているようではは、患者に対して何の説得力もありません、すべての薬を試しましたが、効いたのはケナコルトAだけでした。 どの医師、特に耳鼻科医は花粉症を軽く見すぎています。2週間の入院で退院できる肺炎と、2ヶ月間にわたって仕事さえできなくなる花粉症では、どちらが重症の病であるかを考え直すことが大切だと思います。つまり、患者の切実な訴えにもっと耳を貸すべきです。」(経験こそ大切,m3.com,2013/03/13)

 「私自身も花粉症で、年末になるともう花粉症のことを考えるといやな気分になります。高価な抗アレルギー薬をいろいろ試みましたが、アレルギーに効いても副作用で眠くなり仕事になりません。ある年にケナコルトを注射してから花粉症に悩まされなくなりました。春の訪れが待たれるようになりました。ステロイドの副作用を誇張するするのでなく(大腿骨董壊死や、副腎萎縮などはもっと長期間使わない限り問題ないと思います)、どう使えばいいか考えるべきでしょう。」(壱石,m3.com,2013/03/16)
 私も、ケナコルトA筋注はそれ程悪い治療ではなさそうに思うようになりました。

E手術
 鼻粘膜が肥厚して起こる鼻閉に対しては、内服薬はあまり効果なく、点鼻液も一時的な効果しかないので、慢性的に鼻閉が強い症例に対しては、手術を勧めている。鼻閉は鼻粘膜が反応性に腫脹して起こるものであるので、鼻粘膜を切除することが大切であると考える。したがって、粘膜下下鼻甲介骨切除術は行わない。下鼻甲介粘膜(広範囲)切除術を行い、鼻閉を改善するとともに、分泌腺の減量も図る。下鼻甲介骨が肥大している場合は、骨を含めて適度な大きさに切除する。太い鼻用吸引管が容易に通るくらいが適切であり、あまり広くしすぎると、鼻をかみにくくなってとりかえしのつかない状態になるので注意している。切除断端は1カ月程度で瘢痕性に上皮化する。
 外来で行う場合は、片側づつ行う。手術時は、ボスミン・4%キシロカイン塗布の後、0.5%キシロカインを下甲介に注射してから行うと、出血もほとんどなく、疼痛もなく手術できる。手術後は軟膏ガーゼタンポンし、2〜3日後に抜去するが、抜去の際は麻酔もできないので、痛いし、出血もあるが通常はボスミンガーゼ挿入で容易に止血できるし、後出血もほとんどない。
 慢性的な鼻閉を訴える方に勧めており、手術をされた方は満足される方が多いが、手術というとなかなか踏ん切りがつかない方が多く、薬物療法に頼りがちである。

F後鼻神経切断術
 薬物療法に抵抗する頑固な鼻漏に対しては、近年、後鼻神経切断術が行われるようになってきた。(大久保公裕 松根彰志 日医雑誌 第141巻・第10号/平成25年1月 P2167-2171)

○学会のアレルギー性鼻炎ガイドライをみたい方はこちらをご覧ください。

○私のアレルギー性鼻炎治療フロー

○抗アレルギー剤の眠気について


平成25年7月12日更新

○舌下免疫療法について
・副作用について
 舌下免疫療法により発現するアナフィラキシーには注意が必要ですが、その発現頻度は低く、抗菌薬や非ステロイド抗炎症薬によるアナフィラキシーに比べても極めて少ないといわれています。(Medical Tribune2014年12月25日号 横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンターセンター長 中村陽一談)
・口腔内の副作用について(発売記念座談会「スギ花粉症治療の新展開」より)
 大久保公裕:我々も局所症状である口腔内の副作用を経験しています。初回は数時間続くこともありますが、徐々に発現時間が短くなっていき、ほとんどの症例は未治療で、1週間程度で回復するのが一般的です。口腔底の腫脹等、症状の程度によっては、休薬したり、抗ヒスタミン薬を使用したりすることもあります。
 岡本美孝:口腔、口唇の違和感、そう痒感、腫脹が数時間で軽減しないような場合は、医師に連絡するよう指導しておく必要があるでしょう。
・中断した場合の再開について
 中断後から1ヵ月空けば、導入開始期の初期投与量から再開することになります。(Medical Tribune2014年12月25日号日本医科大学大学院頭頸部・感覚器学分野教授 大久保公裕談)
・治療の継続について
 投与開始後、初回の花粉飛散時期(第1シーズン目)終了時点で本剤投与による治療効果が得られなかった患者に対しては、それ以降の本剤投与の継続を慎重に判断すること(総合製品情報概要より)

○敷き布団の月平均ダニ抗原量



 近年、高断熱化の建築によって気密性が高くなりダニが増えやすい環境になっています。アレルゲンとなるダニの死骸やフンの量は秋の10、11月にピークとなります。これは、喘息患者さんの症状発症、増悪する時期と同じ傾向になります。ダニの生息数は梅雨の時期に増え真夏に最大となります。一方で死骸、フンは秋に最大化します。
  (後藤譲:日小ア誌 11(4),256-262,1997)

目次ヘ戻る

○嗅覚障害
○分類
@感覚異常の質による分類
 1.量的感覚障害
  ・嗅覚低下
  ・嗅覚脱失
 2.質的嗅覚障害
  ・異嗅症
   刺激性異嗅症
   自発性異嗅症
 ・嗅盲
 ・その他
   悪臭症
   自己臭症
   幻臭
   鈎発作
A病態による分類
 1.呼吸性嗅覚障害
 2.嗅粘膜性嗅覚障害
 3.末梢神経性嗅覚障害
 4.中枢性嗅覚障害
B原因疾患による分類
 炎症性鼻副鼻腔疾患(慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎)
 感冒後嗅覚障害
 頭部外傷
 先天性(Kallmann症候群)
 薬剤性(抗腫瘍薬、抗甲状腺薬、ガス)
 中枢疾患(脳腫瘍、神経変性疾患)
 頭蓋内手術
 原因不明(含む加齢変化?)

 原因疾患では炎症性鼻副鼻腔疾患、感冒後嗅覚障害、頭部外傷が3大原因である。原因診断がつかない嗅覚障害も全体の1/4程度あるがねその多くが中高年齢層の発症であり、加齢性の変化が想定されている。
○臨床像
 年齢別分布では50代と60代で全体の半数を占めた。いずれの年齢層も女性の方が多いが年齢分布は男女とも同傾向であった。一方、原因疾患の分布は大きく異なり、弾性では年齢に関係なく慢性副鼻腔炎が最も多く、感冒後嗅覚障害は10%程度であるのに対し、女性では感冒後嗅覚障害が最多で特に50代、60代で急増する傾向にあった。
○静脈性嗅覚検査
 アリナミン注射液(武田薬品)10mg 2mlを肘正中静脈より20秒間で等速に静注する。被検者には1回/2秒の安静呼吸をさせながらニンニク臭の嗅感が起こったら合図をさせる。静注開始からニンニク臭嗅感出現までの時間を潜伏時間として測定する。次に嗅感が消失したら再び合図をしてもらい、嗅感出現から嗅感消失までを持続時間として測定する。
 正常者の潜伏時間は平均8.9秒(7.2〜11.0秒)。持続時間は平均69.3秒(46.2〜94.6秒)とされている。
 静注されたアリナミン液は心臓に還流した後肺循環に流入し、肺毛細血管から肺胞内に拡散された嗅気が呼気とともに呼出され、後鼻孔経由で嗅上皮に到達し、嗅感を生じると考えられている。
 アリナミンテストの反応の有無が予後に関係するとの報告は多い。つまりアリナミンテストでわずかでもにおいを感じた症例では64〜90%でなんらかの改善が得られるのに対して、全くにおわなかった症例では68〜60%が不変であり、治癒にいたった使用例は2%に満たない。(井之口昭:専門医通信 第104号)
・アリナミンテストは予後予測に有用:アリナミンテストと予後の検討では、副鼻腔炎の正常・反応低下では70〜80%、無反応例では50〜60%、感冒の正常例では約70%、無反応例では30〜40%であった。
・病悩期間と予後の検討では、副鼻腔炎では5年以内が予後がよい。
・治療経過と予後では、治療開始後1、2か月でなんらかの改善が得られれば予後がよい傾向がある。(第105回日本耳鼻咽喉科学会)  
・感冒罹患後の嗅粘膜性嗅覚障害に対して当帰芍薬散を投与し、過去のステロイド点鼻療法に優る治療効果を得ている。少なくとも3か月は投与が必要であり、ほとんどの症例で半年〜1年間は投与を続けている。早期治療群においては、治癒42%、改善33% であった。男性患者では、印象として女性ほどの治療効果はえられていないように思われる。(三輪高喜:ENTONI No.100 2009)
・感冒後嗅覚障害においては初診時の静脈性嗅覚検査で嗅感がなくても改善を示す例が少なからずあり、本疾患に特徴的な所見と考えられる(近藤健二 日耳鼻 119:1426-1429,2016)
○治療
・呼吸性嗅覚障害では、鼻副鼻腔炎の治療と副腎皮質ステロイド点鼻薬の懸垂頭位による滴下。好酸球性副鼻腔炎の場合は内服薬の副腎皮質ステロイド剤を一次的に使用することも多い。
・感冒後嗅覚障害などの神経性嗅覚障害については、三輪らは当帰芍薬散を投与すると改善率が高かったと報告している。
・神経性嗅覚使用外に対する治療のトピックスとして嗅覚トレーニングがドイツの研究グループによって臨床応用されている。訓練法はにおいのプリズム理論に基づいた4種類の香り(バラ、ユーカリ、レモン、クローブ)を1日に2回ずつ嗅ぐというものである。いずれにしても神経性嗅覚障害は回復に長期間(1年以上)かかるので、根気よく対応することが重要である。(近藤健二 日耳鼻 119:1426-1429,2016)
    平成29年1月25日改訂

目次ヘ戻る

○鼻・副鼻腔乳頭腫
はじめに
 鼻・副鼻腔乳頭腫は組織学的には良性腫瘍であるが、再発しやすく(10〜20%)、悪性化もしくは悪性腫瘍を合併(5〜9%)することがある。本疾患に対する治療方法は手術による腫瘍の完全摘出であり、手術を行っても腫瘍の摘出が不十分であれると病変は遺残しており再燃する。
1.診断
@鼻内所見:分葉状、桑実状の腫瘤として認められる。
A画像診断:MRIではT2強調像、造影後T1強調像にて腫瘍内部に脳回様に蛇行する索状・線状構造が認められる。
B病理所見:病理組織学的には、inverted type、exophytic type、cylindrical type に分類される。悪性化もしくは悪性腫瘍合併で問題となるのはinverted type である。
2.手術方法
 手術の要点は、腫瘍基部と周囲の正常粘膜とを正確に識別し、腫瘍組織の遺残がないよう骨面から腫瘍基部を完全に取り除くことである。
  (飯村慈朗 日医雑誌 第141巻 ・第10号 P2210 より抜粋)

 HPV(human papilloma virus)はパピローマウイルス科に属する環状構造の二本鎖DNAウイルスで、主として上皮性腫瘍を誘発すると考えられている。
 現在180以上のタイプが分離されており、大きく上皮型と粘膜型に分けられる。上気道は粘膜で被覆されており円柱状の細胞形態をしているが、偽重層扁平上皮の形態を呈する上皮細胞に覆われる部位も存在する。このように異なる二つの形態の上皮細胞が共存する接合部位がsquamo-columnar junction(SCJ)と呼ばれている。その部位は物理的刺激に弱く、HPVはSCJsに生じた物理的な粘膜の傷から侵入して扁平上皮基底部の細胞に感染する。
 ただ一般的にHPV感染の70%は1年以内に消失し、約90%が2年以内に消失する。一方で感染HPVは血中に侵入しないためウイルス血症を起こさず、また感染した細胞を破壊しないためウイルス粒子を大量に放出させることもない。その結果、抗原提示細胞の活性化や抗原認識の過程が回避され、免疫が誘導されにくいといわれている。(日耳鼻 121:1347-1353,2018)

目次ヘ戻る